ステンドグラスへの想い 30 小倉裁判所

喜の心象 小倉裁判所合同庁舎2階ロビー/北九州市小倉/1997年(平成9年)

 ステンドグラスを生業としてから、早28年、月日が流れるのは速いもので
私の頭はかなり白くなってしまった。
思い返すと色々広範囲に、変化に富んだ物件に恵まれ、
これまでよく私ごときに仕事をさせて頂いたものだとつくづく思う。
そんな中でも“国”の仕事をさせて頂いた物件が今までに2件ある。
最初の仕事は11年前(1997年)“旧建設省/九州地方建設局(国土交通省)”の仕事で、 小倉裁判所合同庁舎2階ロビーのステンドグラス制作だった。
A硝子のF氏の紹介だったのだが、まさか直接仕事を貰えるなんて考えてもみなくて、
依頼を受けた時は正直驚いた。

 最初の打ち合わせから全ての事が初めてづくし…
最初は戸惑い、交わす言葉からちぐはぐで、デザインコンセプトを理解して貰うのに、
かなり苦労したのを覚えている。
たとえば格子や縦縞のデザインをすると、これは留置場のイメージを感じさせるので
やめて下さいとか…。
これは和風のイメージでデザインしていますと説明すれば、
和風とはなんですか? etc
ボキャブラリーが貧困な私にとってどう説明しようか、ホント困ったものです。
でも色々勉強もさせて頂きました!

各法廷の違い、裁判官や被告人が一般の人達と顔合わせしないようにした配慮。
留置場の入り口とかトイレのドアーの大きさとか仕上げの理由、
知らない事ばかりで、聞くこと見るもの全てが珍しく驚きの連続だったのを覚えています。
ただこの作品「喜の心象」には後日談があり、
この作品よく見て頂くと解りますが、上下逆にしても可笑しくない作品とは思いませんか?
そうなんです、恥をさらすようで嫌なんですが、作者である私が逆に取り付けてしまった、
後にも先にも唯一の作品なのです。
正直、半年後に撮影に行くまで、全く気がつきませんでした。
半年後、作品に再会し撮影の準備をしてる間、しげしげと作品を見ていると
どうも何かが変、どこかが違う違和感を感じて、よく見ると書いたと思っていた私のサインが、何処を探しても無いのです。
確かに書いたはず?と思いながら気のせいだったのか、書き忘れてしまったのかな‥と思い、ふと上部を見ると確かにサインがちゃんと有るではないですか、それも逆になって…
正直背中に冷たいものが走りましたね。 どうしょうか?と考えた末、
すぐに訳を話し、後日正しく取り付け直しましたけどね。
やはり末代まで恥曝(はじさら)したく無いですからね…
ホント前代未聞の冷や汗ものでした。
自分では解っているつもりですが、生まれつきのオッチョコチョイなんですかね…
この手の失敗良くあるんですよね。

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