ステンドグラスへの想い 29 光・MANDARA

「光・MANDARA」 福岡市/中洲東映プラザビル

 この所Blogは「がんばれ共和国」の事が続いたので、
そろそろ本業のステンドグラスの事が無性に書きたくなってしまった。
また、長い間サボっていて大変申し訳無かったのですが、
ギャラリーに新作作品の更新をしましたので、良かったら覗いてみて下さい。
今後、まだまだweb上に載せてない作品が沢山ありますので、
徐々に載せていきたいと思っています。

 1994年(平成6年)に制作した作品に「光・MANDARA」と云う作品がある。 
14年前に制作した作品だけど、私の中では好きな作品のひとつ。
今考えると一番脂の乗った時代の作品になるかな。
 
 その当時、夢中になって読んだ本に”南方熊楠”の本がある。
何冊か読んだ中に熊楠自身にとっての曼荼羅の記述があり、
私自身、大乗仏教・小乗仏教を描いた曼荼羅に強い興味を持っていただけに、
粘菌を研究していく中で彼自身が感じ取った曼荼羅の世界が、
宗教と違い彼の心象風景を描いた曼荼羅に、その当時、強い衝撃を覚えたのを
現在でもリアルに覚えている。
私にとっての曼荼羅とは何だろう? 
人、1人1人の心の中は小宇宙、混沌としたカオスの世界かもしれない…、
その心象イメージを表現してこそ、ひょっとしたら私自身にとっての曼荼羅の世界に
成るのではないのか…と勝手に解釈。
曖昧さの中で、悩んでいた時に丁度来た仕事の話が、福岡の有名な夜の歓楽街中洲の
中央にある“中洲東映プラザビル”の仕事。
玄関入り口の上にビルの顔として飾られると知り、俄然熱くなりデザインに没頭する…
相も変わらず単純な性格である。
いくつかアイデアを出すが、どうも心に響いてくるデザインが描けない、
意識すればする程、煮詰まってしまう。
過去の経験上解ってはいるが、やはりいつもの地獄が始まる。
しかしこの時は、意外にも何時もと違い、フッと“曼荼羅”を描いてみるかな…と、
ホント軽いノリで単純に描き上げてしまった。
 
もし自分自身が曼荼羅の世界を描くならこうだよね…と、
スケッチブックに遊び半分で無意識に描いた鉛筆の線が、
糸が絡まった様な単純な絵なんだけど、その躊躇い(ためらい)の無い流れる線に
“何か”を感じた。
何故なのか解らないが、瞬間心に響き、ゾクッと”何か”が降りてきたのを感じ、
一気に描いたのが此処にある写真の作品である。
デザイン画ができあがっても、何時もと違いガラスは何を選ぶか、色は何にするのか、
全く考えてもいなかった。
(いつもはデザインの途中でガラスは何を使うか決めてしまうのに…)
ただ描く途中フッと考えたのは、今までとは違い何時も脇役でしかない鉛線を主役にした作品を無性に創ってみたいと云う衝動に駆られてしまった。
この時最も神経を使ったのは、“生きた線”を表現する事だった。
初試みというのは期待と不安が入り交じった複雑な心境だけど、
期待に応えてくれた時の喜びは、言葉では云い表す事が出来ない程嬉しいものです。

線をいかす為に、色彩は単純にしよう…、
心の中に煌めく光りを表すには黄色だけにしよう…とか、
とにかくブツブツ独り言云いながら描いてる姿を想像して下さい。
ホント奇妙だと思う!(乗ってる時は何時もこうです。)
私自身の心象風景“曼荼羅”だから、タイトルは「光・MANDARA」が良い。
珍しくあっさりとタイトルも決まってしまった。 (いつもは凄く悩むのに‥)
後はオーナーが、提案した2枚描いた内のどっちのデザインを選ぶか?
これも意外や意外、オーナー向けのデザインよりも、選ばれないだろうと思っていた、
玄人受けする「光・MANDARA」にあっさりと決まってしまったのには驚きだった。
“縁”のある仕事とは、ホント本人の意志に関係なく動くんですね。
目に見えない“何か”に操られている様な気がする…

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