ステンドグラスへの想い 5(ZEN編)

「ZEN」A氏邸 茶室(1988)

この作品は、私の作品の中でも印象深い作品のひとつです。
ステンドグラスを始めて約5・6年経った時巡り会え、
その後の私に、色んな意味で影響を与えてくれた作品です。

その頃、和(日本)風に興味を持ち始めた時で、
伝統的な家屋、畳の部屋にコンテンポラリーデザインのステンドグラスを入れたい、
それもモノトーン(Black & Whit)で表現したい…、さらに和の空間の光りとは…?
障子に映る影の演出が出来ないか…と前々から思ってました。

タイミングよく、親しくしていた建築家から、
今度、略式の茶室にステンドグラスを提案したいのでデザインを描いてくれと依頼。
想いが通じた喜びで、約一ヶ月間はまってデザインしました。
しかし、想いが強過ぎると過剰に意識してしまい、デザイン画がなかなか描けません。
毎日明け方までデザインと格闘、 出ない…アイデアが出ない…!
絞り出そうにも出せない、生む苦しみ…、 焦りました! 
焦れば焦るほどデザイン画が描けませんでした。
辛い苦しい…!  約束の日は迫る!
身体はクタクタになり、情け無い事に限界を感ぜずにはおれませんでした。
明日が期日、気に入るデザイン画が描け無い…
身体の疲れもありましたが、それよりも精神的な疲れの方が辛くて
つい弱気になり…
もういい、仕方が無い! デザイン画は気に入らないけど、明日持って行こう…!
つい睡魔に負け、2・3時間寝てしまいました。
突然夢の中にモノトーンの“円のデザイン”が浮かび、
喜び一杯 “できたあ…!”と飛び起きると、それは夢でした。
興奮が冷めない内に…、そして消えない内に…、リアルに映ってる内に
工房に飛んで行き、いっきに20分位で描き上げたのが、
この作品「ZEN」です。

この時私が学んだことは、想いが強ければ強いほど、力んで作品を創るのでなく、
自然体、肩の力を抜いて自分の心に素直に答えることが大事を学びました。

この作品は、
1991年「ワールド・グラス・コングレス1991ショー」(アメリカ・ダラス会場)
に於いて作品紹介される。 
その時会場に来てた、建築家やアーティストやデザイナー及びプロデューサー達等から、
「ZEN」は、東洋的でお前のオリジナル作品だと云われたのは、とても嬉しかったし、
その後の、ステンドグラスを続けていく自信に繋がりました。
また、この事が「アーキテクチュラル グラス アート」の本に載る切っ掛けでした。

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